
「もう着なくなってしまった大島紬を売りたいけれど、どのくらいの価格で買い取ってもらえるのかしら?」
この記事を読んでいるあなたは、きっとそう思っていることでしょう。
長い時間と手間をかけて作られる「大島紬」は、高級着物の代表格。
愛好家の方の憧れの逸品であり、着物を着る機会が少なくなった今でも根強い人気を誇ります。
そんな大島紬ですが、無条件で高額買取されるというわけではありません。
模様の入り方や保存状態により、驚くような高値が付くこともあれば、「買ったときはあんなに高かったのに・・・?」とがっかりするような値が付くことも。
そこでこの記事では、
- 高額買取される大島紬の特徴
- 査定をお願いする業者を選ぶコツ
を詳しくお伝えしていきます。
あらかじめ前知識を得てから買取を検討すれば、大事にしてきた大島紬が買い叩かれることはありません。
早速要点を押さえていきましょう!
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大島紬の買取価格の相場について
「大島紬」は、鹿児島県の奄美大島で作られる「本場奄美大島紬」と、東京都武蔵村山市周辺で作られる「村山大島紬」の2つに大きく分けられます。
どちらも高度な技術が必要な織物で伝統工芸品に指定されていますが、人気・需要共に高いのは「本場奄美大島紬」です。
よって、買取価格は本場奄美大島紬の方が高くなりやすい傾向があります。
※本場奄美大島紬には、本物であることを示す証紙が付いています。
証紙には買取価格を決める情報がたくさん載っているため、査定の際には必ず見せるようにしましょう。↓↓
しかし、本場奄美大島紬であれば〇万円で買取!という単純な相場ではありません。
本場奄美大島紬には、糸の染色方法や織り方にいくつも種類があります。
それら技術の難易度や組み合わせによって「市場に出回りやすい(=安価で買取されやすい)大島紬」と「希少価値の高い(=高値で買取されやすい)大島紬」に分かれていきます。
さらには「状態の良さ」というポイントも加味されて査定がされます。
どれだけ高い技術で作られた大島紬でも、傷みが激しかったりサイズに問題があったりすると、買取価格はみるみる下がっていきます。
こんな風に、さまざまな要素をチェックして最終的に査定価格が出されることを考えると、買取相場はあってないようなものなのです。
買取価格の高い大島紬の特徴 ー染めー
本場奄美大島紬は、糸を先に染色してから織りで模様を表現する着物です。
糸の染色方法にはいくつか種類がありますが、中でも伝統的に受け継がれている技法を使って染められた大島紬には証紙が付いており、買取価格が上がりやすい傾向があります。
※本場奄美大島紬の証紙とは別に、染めの種類をあらわす証紙も付いています。
染めの種類 | 染めの証紙 | 特徴 |
泥染め | 「古代染色・純泥染め」の証紙 | 地色が黒く、絣(模様)部分が白 |
泥藍染め | 「古代染色・純泥染め」の証紙 | 地色が黒く、絣(模様)部分が藍色 |
色泥染め | 「古代染色・純泥染め」の証紙 | 地色が黒く、絣(模様)部分が多色 |
白泥染め | 生産者オリジナルの「白泥染め」証紙 | 地色が灰色味のある白で、絣(模様)部分が単色か多色 |
正藍染め | 「古代染色純植物染め」の証紙 | 全体的に藍色か、地色が藍色で絣(模様)部分が白 |
草木染め | 「古代染色純植物染め」の証紙 ※植物名も記載 |
染料の植物によって色が異なる |
白大島 | なし(化学染料染め) | 地色が白で、絣(模様)部分が単色か多色 |
色大島 | なし(化学染料染め) | 着物によって色はさまざま |
後染め | 「〇〇友禅」など、他産地の染め証紙が付いている場合あり | 大島紬に友禅染などで後から模様を付けたもの |
買取査定で評価されやすいのが、上の表でピンクに色分けされている「泥染め」「藍泥染め」「色泥染め」「白泥染め」「正藍染め」「草木染め」です。
とくに泥を用いた染めは、世界で奄美大島でしかおこなわれていない手法で、大変価値があるとされています。
買取価値の高い大島紬の特徴 ー織りー
本場奄美大島紬には、糸を織って模様を作っていく方法にもいくつか種類があります。
大きく分けて「手織り」と「機械織り」になるわけですが、手織りの方が模様が緻密で技術も必要です。その分希少価値が出て買取価格も上がりやすいと言われています。
手織りと機械織りの区別は証紙で確認できます。
証紙に「織絣」と赤いはんこが押してあるもの、もしくは「正絹」と書かれた丸い金色のシールが貼ってあるものが機械織りです。
手織りには「織絣」のはんこはありませんし、貼られているのは「伝統工芸品マーク」です。
まずはこれが、高価買取になるか否か見分けるひとつのポイントになります。
手織りの手法は、さらに「経緯絣(たてよこかすり)」「緯絣(よこかすり)」「縞大島(しまおおしま)」に分類されます。(縞大島はほとんどが機械織りですが、たまに手織りのものもあります)
- 経緯絣(たてよこかすり)
→縦糸と横糸が交差した点が集まって模様になるよう織られたもの。高い技術が必要なため希少価値が高く、高価買取されやすい。 - 緯絣(よこかすり)
→横糸だけで模様を表現する織り方。小さな横線が集まって模様になっているように見える。経緯絣に比べると簡単。 - 縞大島(しまおおしま)
→縞や格子など、全体的に幾何学模様になるよう織られたもの。
経緯絣(たてよこかすり)が最も難易度の高い織り方なので、店頭価格も買取価格も高い傾向があります。
経緯絣(たてよこかすり)のさらなる価値の見分け方
本場奄美大島紬の手織りの中で最も難易度の高い「経緯絣(たてよこかすり)」は、さらに「カタス式」と「一元式」に織り方が分かれます。
カタス式 | 絣糸(模様の色の糸)1本と地糸3本でT字型の絣を作る
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一元式 ※こちらの方が手間暇がかかる |
絣糸(模様の色の糸)2本と地糸2本で十字型の絣を作る
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そして、絣糸(模様の色の糸)を何本使うか?(密度)を表すものとして「マルキ」という独特の単位があります。
5マルキ、7マルキ、9マルキが一般的ですが、数字が大きくなるにつれて絣糸の本数が多くなり、緻密な模様となります。
その分技術も時間も必要となるため、希少価値が高まり買取価格にも反映されます。
先に説明した「カタス式」「一元式」の織り方と合わせて考えると、一元式でマルキ数の多い大島紬が最も価格が高騰することが分かります。
5マルキカタス式 | タテ絣糸の間に地糸が4本入る
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7マルキカタス式 | タテ絣糸の間に地糸が3本入る
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9マルキカタス式 | タテ絣糸の間に地糸が2本入る
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5マルキ一元式 | タテ絣糸2本とタテ絣糸2本の間に地糸が3本入る
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7マルキ一元式 | タテ絣糸2本とタテ絣糸2本の間に地糸が2本入る
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9マルキ一元式 (技術的に不可能と言われています) |
タテ絣糸2本とタテ絣糸2本の間に地糸が1本入る
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あなたがお持ちの大島紬の織り目によ~く目をこらしてみてください。
どんな織り方でどのマルキ数に当てはまるでしょうか?
自分で技術的な価値をある程度理解することができれば、悪質な業者に安値で買取されるのを防げますね。
大島紬の買取価格を左右するその他2つのポイント
本場奄美大島紬の買取価格は、これまでお話ししてきたとおり「技術的な価値」が大きな判断基準となって決まります。
ですが同時に「状態の良さ」も重要視されます。
状態の良さとは、具体的に次の2つのことを指します。
①汚れや変色、傷、着古した感のないこと
泥染めされた大島紬は汚れも虫もつきにくい特徴がありますが、それでも保管を怠るとカビが生えたり、知らない間に付いた汚れが落ちにくくなったりします。
とくに、お酢や果汁が付くと色落ちやシミになる可能性が高く、お食事会に着ていくことの多かった大島紬は状態をよく確かめる必要があります。
もちろん、買取金額が高くなるのは見た目がキレイなものです。
②サイズが大きめであること(できれば反物がベスト)
大は小を兼ねるで、サイズの大きな着物は仕立て直して小さくすることができます。
その反面、小さいサイズのものは生地がその寸法で裁断されているので、いくら頑張っても大きくすることはできません。
現代の女性は昔の女性に比べて身長が高いため、数十年前のビンテージ着物を着ると袖丈や裾が足りないケースがよくあります。
そのため現代の需要を考えるならば、サイズが大きめの大島紬の方が重宝されます。
※ちなみに、現在既製品として販売されている着物のサイズは身長155~163センチくらいの方を想定しています。各部位の寸法の平均値は、下の図のようになることが多いです。
反物の状態の大島紬であれば、次に手にした方のサイズに合わせてお仕立てすることができます。
そのため買取価格は上昇しやすいです。
緻密な模様が施されていて、さらに状態も良い本場奄美大島紬の反物であれば、数十万単位の買取価格が付くこともあります。
大島紬の査定はどんな業者にお願いする?
着物を買い取ってくれるサービスは世の中いろいろありますが、大島紬は必ず「着物買取専門業者」に査定を依頼するようにしましょう。
大島紬の証紙の内容を正しく読み取ったり、織りの種類やマルキ数を判断したりするには専門知識が不可欠です。
街のリサイクルショップなど、専門家が手薄な場所へ持ち込むと正しく査定がされない可能性があるので避けてくださいね。
着物買取専門業者が自宅の近くにない場合は、インターネットから依頼することができます。
業者によって異なりますが、主に
- 宅配査定
→宅配便で着物を業者に送って査定してもらう方法 - 出張査定
→担当者に自宅に来てもらい、その場で査定してもらう方法 - 持ち込み査定
→業者に直接持ち込んで、その場で査定してもらう方法
の3パターンが用意されていることが多いです。
大島紬は絹100%のデリケートな素材ですので、移動中のトラブル(急な雨で濡れた、偏ってシワシワになった・・・など)を防ぐのであれば、出張査定の利用がおすすめです。
なるべく高く買い取ってもらうために、いくつかの業者を比較することもあるでしょう。
業者のホームページなどをよく読み、査定にかかる諸々の手数料(出張料、配送料など)や、査定の全体の流れを確認しながら進めていきましょう。
良い業者かどうか見極める4つのポイント
大島紬は価値のある着物として有名であるため、買取業者の中には安く買い叩いて高く売ろうとするところもあります。
せっかく売却するなら正当な査定をしてもらえるよう、信頼できる業者を選びたいですよね。
そこでここからは、良い業者かどうか判断する4つのポイントを解説していきます。
ホームページなどの情報を見て、当てはまるかどうか確かめてみましょう。
①買取実績が豊富であること
ホームページなどをチェックして、着物の買取実績がたくさんある業者を選びましょう。大島紬についての実績もチェックを忘れずに!
実績が多いということは、それだけたくさんの人に支持されている証拠です。
②買取の一連の流れが説明されていること
着物はどこで、どのように査定するのか?買取料金はどのようにして渡されるのか?
一連の流れがきちんと分かる業者を選びましょう。
実際の査定の様子が画像や動画などで確認できるのであれば、手袋をしているかどうかもチェックします。
査定員が手袋をしていれば、皮脂や汗で汚れないように配慮がされている(=着物を丁寧に扱ってくれる)証拠です。
③手数料(査定料や出張料)キャンセルについて明確に説明されていること
買取価格に納得がいかない場合は、もちろんキャンセルということもありえます。
または、いったんは買取が成立したものの、クーリングオフでキャンセルにするケースも考えられます。
そんな時は、着物はどうやって返却されるのか?査定にかかった手間に対して、お金を払う必要があるのか?
買取が成立しなかった場合の流れについても、明確になっている業者を選びましょう。
④スタッフの「顔」が見えること
問い合わせ先がきちんと明記されていたり、査定員が紹介されているページがあったりと、「中の人」につながりやすい専門業者の方が安心です。
以上が、良い着物買取専門業者が持つ4つの特徴です。
あなたの大島紬にこもった思い出を汲んで、丁寧に査定してくれる業者を選んでくださいね。