もう着なくなってしまった訪問着。
タンスの肥やしにしておくよりは、大切に袖を通してもらえる人に渡った方が嬉しいですよね。
そこで選択肢のひとつとして「買取」を考える方も多いと思います。
初めて着物の買取査定に挑戦する際には、
「なるべく高く買い取ってもらいたいけれど、どの業者にお願いするのがいいの?」
「もう10年以上前にあつらえた古い訪問着だけれど、それでも買い取ってもらえるの?」
「買取価格が上がる条件はあるのかしら?」
など、さまざまな疑問が出てくることでしょう。
そこでこの記事では、
- 訪問着の買取価格の相場
- 買取ができる場所
- 買取価格が高い訪問着の特徴、低い訪問着の特徴
を詳しく解説していきます。
あなたがお持ちの訪問着と照らし合わせてみて、判断の目安にしてくださいね。
Contents
まずは訪問着の特徴を確認!中には「付下げ」と間違いやすい場合も・・・
着物には種類によって三段階の格式(第一礼装・第二礼装または略礼装・おしゃれ着)に分かれており、着るのがふさわしい場所に違いがあります。
訪問着は第二礼装(略礼装)に分類される着物です。
着物の種類 | 格式 | ふさわしい場所 |
黒留袖 | 第一礼装(既婚女性用) | 近しい親族の結婚式 |
色留袖 | 第一礼装(既未婚問わず) |
|
振袖 | 第一礼装(未婚女性用) | 近しい親族の結婚式 |
訪問着 | 第二礼装 |
など |
付下げ | 第二礼装 |
など |
色無地(紋付き) | 第二礼装 |
など |
小紋・紋なし色無地 | おしゃれ着 |
など |
紬 | おしゃれ着 |
など |
訪問着は、柄によっては同じく第二礼装の「付下げ」と区別が付きにくい場合があります。
格が同じなら問題がないように思えますが、買取業者によっては付下げを”おしゃれ着寄りの着物”と位置づけて査定することがあるので注意が必要です。
※一般的には、訪問着より付下げの方が柄が控えめで、華やかさが抑えられる傾向が強いため
現在はおしゃれ着としての着物の需要より、改まった席で着る着物の需要の方が高いです。
そのため、もしもあなたの手元の訪問着が「付下げ」だった場合は買取価格に影響が出ます。
ですのでまずは、訪問着の特徴をきちんと押さえておきましょう。
訪問着の特徴とは?
訪問着の最大の特徴は、
- 着物の柄が縫い目をまたいでひと続きになっていること
- 胸から肩、袖にかけてもひと続きの柄があしらわれていること
です。
【訪問着の柄の例↓】
訪問着は仮絵羽(反物を着物の形に仮縫いした状態)に柄を付けていきます。
全身に渡って柄が広がるのが特徴です。上半身が無地の場合は「色留袖」に分類されます。
着物を1枚のキャンパスのように見立てて草花や風景を描いていくので、縫い目で柄が途切れることがありません。
(正確には、仮絵羽=仮縫いの状態で下絵を描いた後に一旦ほどき、染めを施して再び縫い合わせ完成させます)
それに対して訪問着と間違いやすい「付下げ」は、柄が全て上向きになっているのが特徴です。
基本的には柄が飛び飛びで配置されますが、最近では一部だけ縫い目をまたいで柄が続くタイプも登場しています。
これが、訪問着と区別が付きにくくなるポイントです。
【付下げの柄の例↓】
中には、付下げでも訪問着と同じくらい広い面積で柄がある「付下げ訪問着」と呼ばれる着物もあります。
ただし、一般的には付下げの方が柄がおとなしく、訪問着よりも「晴れ着感」が少なくなります。
生地の状態・寸法・色・作家なども査定の項目に含まれるため、訪問着だから買取価格が高い、付下げだから買取価格が低いとは一概に言えませんが、現在ではどちらかというと晴れ着用の訪問着の方が需要が高い傾向があります。
訪問着の買取ができる場所はどこ?
訪問着を買い取ってもらう方法は主に次の4つです。
- ネットオークションに出品
- フリマアプリに出品
- 近所のリサイクルショップや質屋に持ち込み
- 着物専門買取業者に依頼
このうち最もおすすめなのが、着物専門買取業者に査定を依頼することです。
ネットオークションやフリマアプリ、リサイクルショップでは、あなたの訪問着の本当の価値を分かって買い取りしてくれる人は少ないでしょう。
着物の価値観は独特です。
例えば染めの種類や、柄付けを手がけた作家、織物の産地などの条件により、その価値に大きな差が出ます。
これらの価値に気付き、総合的な判断で適切な価格を付けられるのは、やはり着物の専門知識を持つ買取業者しかありません。
着物買取専門業者が近所にない場合は、ネットから査定を依頼することになります。
初めての場合は多少緊張すると思いますが、適正価格で訪問着を買い取ってもらうために連絡を取ってみましょう。
訪問着の買取価格の相場はいくら?
生地の種類や状態、購入してからの年月、織り元や染め元の知名度、色、サイズなど、訪問着の買取価格はさまざまな観点を考慮して決められます。
なので、平均相場というものはあってないような状態です。
それでも分かりやすいようにあえて数字を出すのであれば、1万円~5万円くらいが平均相場となります。
もちろんこれは着物専門買取業者による査定で、状態のいい訪問着の場合です。
シミがあって汚れていたり、素材が絹(正絹)ではなくポリエステルだったりすると、買取価格は限りなくゼロになることもあります。
その反面、有名作家が手がけた訪問着であれば、10万円以上の値が付くこともあります。
なんにせよ、まずは「専門業者に実際に見てもらう」ということが、正確な買取価格を知る一番の近道です。
買取価格が高くなりやすい7つのポイント
①人間国宝や伝統工芸師が手がけた品(落款や証紙付き)
技術の高い有名作家が手がける訪問着は希少価値も高く、状態が良いと買取価格が跳ね上がる場合があります。
査定の際には、その人物が作ったことを示す落款や証紙を必ず見せるようにしましょう。
【有名作家の例】
稲垣稔次郎・池田リサ・上野為二・浦野理一・上野街子・小倉淳史・鎌倉芳太郎・木村雨山・大村禎一・熊谷好博子・久保田一竹・小宮康孝・佐々木苑子・坂口幸市・志村ふくみ・城間栄順・鈴木紀絵・田畑喜八・玉那覇有公・南部芳松・中村勇二郎・中町博志・新田秀次・野口真造・野口彦太郎・羽田登喜男・林宗平・百貫華峰・福田喜重・本郷孝文・松原定吉・毎田健治・毎田仁郎・松原利男・宮平初子・皆川月華・恵積五郎・森口華弘・森口邦彦・山田栄一・山田貢・山岸幸一・由水十久・六谷梅軒
②有名織元・染め元の品(落款や証紙付き)
着物や帯の生地の製造元である織元、染め元にも有名どころがあります。
人気の織元、染め元が手がける訪問着は、買取価格が高値になる傾向が強いです。
【有名織元・染め元の一例】
誉田屋源兵衛・しょうざん・龍村美術織物・大彦・千切屋・大羊居
③有名産地の生地を用いた品(落款・証書付き)
着物の生地を形づくる染めや織りには、産地によって特色があります。
有名産地の落款や証書が付いた訪問着は、買取価格がアップする傾向があります。
【有名産地の一例】
小千谷縮・越後上布・加賀友禅・本塩沢・紅型染め・宮古上布
④老舗で購入した訪問着
老舗の呉服店や百貨店で購入した訪問着は、そのネームバリューにより買取価格が上がる傾向があります。
【老舗の一例】
ぎをん斉藤・に志田・えり善・ちた和・きしや・おか善・越後屋・世きね・福田屋・高島屋百貨店・三越百貨店・大丸百貨店
⑤汚れや変色、虫食いのないもの
当たり前ですが、汗ジミなどの汚れや退色、虫食いの跡がないものの方が高く売れます。
絹100%(正絹)の着物は着用してから時間が経つごとに劣化が目立つようになってきますので、購入してから日の浅い訪問着の方がこの点では有利です。
もしも希少価値の高い品だと確実に分かっているようであれば、着物専門のクリーニングで汚れを落としてから査定を申し込むという方法を検討してもいいでしょう。
⑥サイズが大きめの訪問着
大は小を兼ねるで、サイズの大きな訪問着は仕立て直して小さくすることができます。
その反面、小さいサイズのものは生地がその寸法で裁断されているので、いくら頑張っても大きくすることはできません。
現代の女性は昔の女性に比べて身長が高いため、数十年前のビンテージ着物を着ると袖丈や裾が足りないケースがよくあります。
そのため現代の需要を考えるならば、サイズが大きめの訪問着の方が重宝されます。
※ちなみに、現在既製品として販売されている着物のサイズは身長155~163センチくらいの方を想定しています。各部位の寸法の平均値は、下の図のようになることが多いです。
⑦古典的な柄で万人受けしやすい色のもの
買取価格が高くなりやすいのは、平たく言えば「売れやすそうなもの」です。
多くの人が着用に抵抗のない落ち着いた色合いで、時代に左右されず人気がある古典柄の訪問着がそれに当たります。
この7つのポイントにたくさん当てはまるほど、あなたの訪問着の買取価格は相場よりも高くなる可能性があります。
買取価格が低くなりやすい4つのポイント
①ポリエステルのもの
伝統的な着物は生地が絹(正絹)です。それに対して、近年「洗える着物」として登場したのが、洋服と同じ素材のポリエステルを使った品です。
ポリエステル製の着物は傷みにくく絹よりも扱いやすいメリットがありますが、希少価値を考えると正絹に勝つことはできません。
ポリエステルの訪問着は、買取価格がほとんど付かないケースもよくあります。
②汚れや変色、虫食いなどの傷みがあるもの
汗ジミや泥はね、水はねなどで汚れているもの、虫食いの傷みが目立つものはやはり買取価格が低くなります。
とくに着用して目立つ襟元や袖、裾付近に汚れが付いていると査定に大きく響きます。
③サイズが小さいもの
現代女性(身長150~165センチ前後)が着て袖や裾が短くなってしまうサイズの訪問着は、買取価格が低くなる傾向があります。
代々伝わっている、昔あつらえた訪問着などはこの特徴に当てはまることが多いです。
④色柄が奇抜なもの
着物の色やデザインには大胆なものも多く、おぉっ!と目を見張る訪問着をお持ちの方もいることでしょう。
しかし着る人が限定されそうな奇抜な色柄は、買取業者にとっても売れる人が限定される品になります。
そのためオーソドックスな色柄の訪問着よりも、どうしても買取価格が下がる傾向があります。
この4つが、査定にマイナスの影響を与えるポイントとなります。
買取を依頼するなら断然「〇〇買取」がおすすめ!
着物買取専門業者への依頼方法は、主に3つあります。
- 宅配買取
→宅急便で着物を業者に送って査定してもらう方法 - 出張買取
→担当者に自宅に来てもらい査定する方法 - 持ち込み買取
→専門業者に着物を持ち込んで査定してもらう方法
この中でもっともおすすめなのが、お持ちの訪問着を移動することなくおこなえる「出張買取」です。
宅配買取や持ち込み買取は、訪問着の移動時間が長いほど生地にシワが寄る可能性が高くなります。
また、万が一雨などで水濡れしてしまったときにはシミの原因にもなります。
そういった、買取価格の低下につながるようなリスクを最小限にできるのが、専門業者に直接来てもらう出張買取です。
着物の取り扱いに慣れているようであれば、宅配買取や持ち込み買取を利用しても構いません。
ですがもしも慣れていないようであれば、出張買取を選択するのが安全です。
ちなみに、タンスにしまいっぱなしになっていた訪問着には、たたみジワが付いていることが多いです。
出張買取当日の3日前くらいから衣紋掛け(着物用ハンガー)にかけて、直射日光を避けた風通しの良い場所に広げておきましょう。
これでたたみジワを目立たなくすることができます。